IE9ピン留め

改めて読直してみるかと思い購入

夏目 漱石の坊っちゃん

「この不浄な地を離れた」って…どんだけ?

漱石の松山時代の怨念が感じられて面白いです。
しかし昔はこんな他愛の無い作品でも売れたんですねぇ。
ま、日本の田舎は昔からひどかったということですか。
今の日本の田舎は明治の昔より更に荒廃して、東南アジアあたりに行くといくらでも目にする
駄目なアジアの都市といった何ともいえない陰気な風情を醸し出していて、漱石でなくとも
胃潰瘍になりそうです。
清の可愛らしさが一服の清涼剤でありますが、漱石には申し訳ないけど今どき清みたいな可愛い婆さんは
江戸にもいませんぜ。
それに現代の江戸は、荒廃した田舎を脱出した優秀で野心家の田舎者に占領されてますから!
最後の清の言葉「お墓の中で坊ちゃんの来るのを楽しみに待っております」が主人公への情の深さを物語っていて
微笑ましいですね。

それなりに読みやすい

学校で坊ちゃんを勉強してから数十年が経過した.
本屋で三国志の本を見ていると,本書が目にとまった.
本書を見て最初に驚いたのは,薄さ.
学校の授業だと,もっと薄っぺらかったが,興味なかった
ので,かなり分厚く見えた.
今手に取ると,目次や注釈をあわせても170ページほど.
改めて読直してみるかと思い購入した.

それなりに読みやすい文体になっているものの,
まだ読みにくさがある.
もっとも,私のような田舎ものにべらんめえ調子は
理解できないのでしょうけどね.

読終った感想・・・
坊ちゃんって,田舎そのものにもてあそばれたというか,
世間から肩すかしを食らわされたピエロにしか見えない.
もっと豪傑として,猪突猛進に生きるのかと思った.
ちょっと坊ちゃんに幻滅かな.

無鉄砲で損ばかりする男の話

「親譲りの無鉄砲で小供のときから損ばかりしている」江戸育ちの若者
が、片田舎の旧制中学の数学教師となり、そこでの生活を描いた話である。
本人も認めているように主人公は単純で、回りくどいことが嫌いで、筋が
通っていないことはもっと嫌いで、したたかな人間ほどいけ好かない奴は
いない、そんな性格である。もちろん誰からも好かれる性格ではない。
ただし、主人公の言動は嘘偽りがないから、見ていて(読んでいて)気持
ちがよいことは確かだ。もっと言えば清々しい。
片田舎の狭いコミュニティのなかで、周囲の目を気にしながら“うまく
立ち回って”生きていく人々が多く描かれる。よそ者の主人公は、そうし
たコミュニティに縛られていないからこそ、言いたいことを言いまくる。

個人的に一番好きなのは山嵐に対する主人公の評価がコロコロ変わってい
くところである。こいつは図体がでかいだけで大した知恵はないだとか
言葉を知らない奴だとか、山嵐をこき下ろしたと思ったら、次の段では、
なかなかの知恵者だとか、俺よりも利口みたいだから山嵐に従おうとかの
話になる。主人公の単純さや素直さが見事にでていてニヤリとする。

坊っちゃん

コーチ ショルダーバッグ



# by aqushibuya | 2010-11-04 23:20 | 読書

田辺 聖子の残花亭日暦

気張らんと まあぼちぼちに いきまひょか
著者であるおせいさんのユーモアに包まれた喜怒哀楽がしみじみと心に染みいる佳作。

38年間の人生を共にした「かもかのおっちゃん」に、1年かけてゆっくりと別れを告げる日々を、折々の出来事や考えたことを織り交ぜながら書き留めた飾らぬ心情の吐露が凝縮されています。愛する人を失うことはとても辛いことですが、その死が突然ではなく時間をかけてゆっくりと訪れることによって、残される本人が少しずつ少しずつ、その死を受け入れていく様が心を打ちます。おせいさんの好きな川柳「遠き人を北斗の杓で掬わんか」に込められた思いのなんと愛情深いことか。

折々に挿入されている神戸や大阪の昭和時代の歴史、源氏物語や百人一首に関する一言一言がとても素敵です。私が小中学生時代の週末のサイクリングの集合地点としていた大阪城公園の〈教育塔〉が、昭和9年の室戸台風で犠牲になった教師・児童の慰霊をきっかけとして建てられた事なども、恥ずかしながら本書を読んで初めて知りました。

では皆さん『気張らんと まあぼちぼちに いきまひょか』

あこがれの夫婦
田辺さんの川野さんに向ける深い愛情をひしひしと感じました。ウチもこんな夫婦になれればいいな、こんな風にどちらかがどちらかを見送ることが出来たらいいなと思う本でした。

愛する夫を送る妻・田辺聖子の日記
女流作家・田辺聖子さんが病にたおれた夫を送るまでの日記。と書くと、重ための
介護日記みたいなのかな?と思っちゃうのですが、ユーモアは絶対に欠かさない。
それが、この作家さんの品格だと思う。「かわいそに。ワシは あんたの。味方やで」と
いうのが夫が田辺さんに残した遺言。「守ってあげる」なんていえない世代のご主人にしたら
最高の愛の言葉だ。ご主人の葬儀のときの、田辺さんの作家仲間の弔電や
弔辞がすばらしくて、読んでいて泣けました。そして田辺さんの喪主挨拶も。
このへんの場面は、実際のお葬式について描かれているのに、何かすごい
小説を読んでいるみたいな緊張感がありました。

残花亭日暦

オロビアンコ



# by aqushibuya | 2010-11-02 18:40 | 読書

理論的に話が展開することを好む人に

お勧めの一冊
「フォースカインド」という映画を観て感動した方には超おすすめ。

これを読むとさらなる感染に見舞われます。

娯楽小説として一級品です。

作者の歴史物も好きですが、本書は異質の感動を与えてくれます。

内容の信憑性?
SF小説としてご覧なさればよろし。

こんなスケールのでかい小説があるなんて・・・。
古事記に登場する神々をわかりやすく紐解いてかつ大胆に書き下ろしている作品です。
最初の方は難しい内容が続きますが気が付けば高橋ワールドに引き込まれています。
長編小説で、すばらしい完成度だと思います。

長さを感じさせない長編です
読後にまず思ったのは「メロディーだけの音楽会」。しかも楽章ごとに楽器がしばしば変わる。歴史ミステリーかと思えば、ハードボイルドアクションに変わり、謀略戦が展開すれば、男の友情物語へ変化する。テーマが広大なので、ややもすると構成が支離滅裂になりがちなのを、さすがに著者の筆力が上手にフォローしている。ただ、残念だったのはもう少し中国史をまともに検討して欲しかったです。
「メロディー」はほぼ虹人の独演で、1巻などは彼の台詞で埋め尽くされている。多彩な和音で世界の奥行きを体感したい人には不向きかもしれない。逆にいうと、滴るような背景描写でテーマを浮き彫りにし読者に視覚的な理解を迫ることがないので、理論的に話が展開することを好む人にはぜひお勧めする。

また、本作は全6巻だが5、6巻は外伝的な性格を帯びている。「竜」をめぐる旅はとりあえず4巻で終わっているので、購入を考えている人はまずは4巻まで検討されたらどうだろうか。
竜の柩(1)

ヴィヴィアン 財布



# by aqushibuya | 2010-10-30 23:18 | 読書

子育て中に、そして未来に

涙が止まらなかった
私は未婚で子供もいません。
でも、この本の中に込められた、息子さんへの愛情が胸に響いて、
涙が止まりませんでした。
愛あふれる一冊。

子育て中の人も、これから親になろうという人にも、
親にはならないかも知れないけれど、甥っ子、姪っ子、友達の子供たちが愛おしいと思う人にも
読んでほしい歌集です。

私は特に、男性に読んでほしいです。


愛おしい
目頭が熱くなりました。やんちゃなこどもに手を焼く毎日ですが、改めて愛おしい存在だということを思い返すことができます。
育児に疲れている人にもオススメしたい1冊。

子育て中に、そして未来に
出産を控えている時に、人から薦められました。
いまさら俵万智を読むのも気恥ずかしい...なんて思ってましたが
手にとってみて、その斜に構えた心が逆に恥ずかしくなりました。
子供を身ごもり、出産し育てている今の気持ち、それもあふれ出した感情だけがぎゅっと詰め込まれているのです。
俵さん自身は実際には辛い思いも多々されたのではと想像できますが、ここにあるのは子供への深い慈しみばかりです。
出産後、実家から遠方の現住所地へ戻るとき、本といえば育児書のほかには、たった一冊この詩集だけを持ち帰りました。
一日中子供と一緒にいるとついつい心が籠りがちになりますが、そんなときに開いてみると
子供を産んで育てられる稀有さと子供の尊さに胸が熱くなり、また頑張ろうと思えます。
子育て中は、今以上にしんどい思いをすると思いますが、そんなときにこの短歌を読み、愛おしい存在への思いを新たにしていきたいと思います。

プーさんの鼻

ささやいて



# by aqushibuya | 2010-10-27 23:28 | 日記

まぶしい情景描写。

映画化されて気になったので....
買って読んでみました。
純愛ですね。確かに。その点はやっぱり癒されます。
自然ていいな?と活字を見てても大自然が浮かび上がってきます。

話の内容は、結構読んでて退屈になります。なんか長いのです。話か長々しすぎててあんまり展開がないまま進んでいきます。
純愛と自然を感じながら読んでいるので、気持ちも純粋になれる気がします。それでも....。

それと、本の裏に書いてある「あらすじ」みたいのを読んで、その本を読むか決めますよね?
なんと、その裏に書いてある「あらすじ」で本の3分の2を説明してしまっていすのです。
普通は、序章だけ説明すると思うのですが?出版社の問題か、それても3分の2まで展開がほとんどない本自体の本題なのか...。
とにかく、これにはショックでした。

読む方はストーリーよりも癒し重視で読んでみてください。

まぶしい情景描写。
訛りがあるので登場人物の心情が読み取りにくいかもしれません。

それにもかかわらず舞台が目に浮かぶような内容は魅力的だと思います。

実際ありえない話かもしれませんが
それを不自然に感じる作品ではありません。

2部構成ですが主人公が劇的に変化を遂げないというのも新鮮です。

極めてストレートな
恋愛小説であり、青春小説である。耳の聞こえない小百合と、唯一彼女の言葉を完全に理解できる少年、心平の物語。一部は少年時代、二部は十八歳と少し大人になった彼らを描く、二部構成。
こんなベタベタな設定でいて、いつの間にか物語に引き込まれている快感。相当な実力がないとかけるものではない。
一部、二部は少年のピュアな心が、少し大人になって現実と向かいあわなくてはならない、と言った対比。まぁ、主人公連中たちはわがままとうつるかもしれないが、何故かいつのまにか精一杯応援してしまった。すごかった。

雨鱒の川
川上健一

トリンプ



# by aqushibuya | 2010-10-18 22:26 | 読書

セレンディップの奇跡

凍えた心をホットさせる短編集です!
東京から長野のある都市までの出張の電車の中で、読みました。
丁度、仕事で忙殺される日々で心がカサカサした感じの時でした。
「フィルム」では記憶にない父の人生を知った主人公とともに泣いてしまい、
「タワシタ」ではこんな素敵な仲間と仕事ができるなんて羨ましいと微笑んでしまったり。
とにかく心が温まります。
ホッとしたい時にお薦めしたい本です。


セレンディップの奇跡
全10編からなる短編集。どのエピソードも小気味よくすぅっとぼくに入ってきて、ぼくの乾いた心のひび割れた隙間を潤わせてくれるような気がしました。
“セレンディピティ”・・・「探しても見つからない、価値ある楽しいものを偶然に見つける能力」・・・きっと小山薫堂さんはこの能力にもきっと長けているんだろうな・・・この本を読んでいてそう思いました。
読み終えたあと、この本に出会う前の自分が気付いてなかった自分の人生の中にあるちょっといいコト、小さな幸せを見つけた気がする、そんな素敵な1冊でした。


なかなか
薫堂さんが小説を?と言う感じで前から短編集「フィルム」は知っていましたが、読む機会を失っていました。最近、あまり良さそうな本がないので「フィルム」を読んだら、さすが薫堂
さんだなぁ?という箇所が随所にあり、短編集が好きでない私も楽しく読ませて頂きました。
10の物語で私のお気に入りは、パイナップル・ラプソディです。10の物語の中で多分、薫堂さんの実生活を小説にしている所が多々あるのでは?「考えないヒント」を読まれた方は特にオススメです。

フィルム
小山 薫堂

ドクターシーラボ



# by aqushibuya | 2010-10-18 19:09 | 注目

かなり新鮮だった

新たな傑作誕生の予感
木地 雅映子さんは,1993年のデビュー作 '氷の海のガレオン' 以来,社会的適応に困難を持つ生徒達の生き方を追求して来た.2006年の '悦楽の園' では中学校が舞台だったが,今度は高校に舞台を移し,問題ある生徒の数も一挙に約7名に増やしての物語である.これはその最初の部分 (導入部) で,普通ならおとなしい筈だけれど,どういたしまして '天才' たちは大暴れする.まだ誰が主人公になるのか不明だし,天才たちがなぜここまで風変わりなのかもよく判らない.しかし部員5名未満の,そのために校舎の中に部室が持てない7文化部がたむろする重要文化財級の古い洋館 (桃園会館),通称マイナークラブハウスの設定は面白く,期待が持てる.続編 (マイナークラブハウスの森林生活) は5月に予定されているので,あまり待たずにまだ出番のない女子バレーボール部から追い出されたサトリの成長ぶりもわかるか,と今から楽しみだ. 新しい木地流学園物語に期待しよう.

でぃーぷいんぱくと!!!
いやはや、驚きました。表面的には(カバーの絵も含めて)軽やかです。結構厚めの本なのに、マンガを読むようにサクサクと読めました。かなり笑えました('▽`)

でも、まだシリーズ1巻目なので予想でしかありませんが、この作者が書こうとしていることって、結構深いんじゃないでしょうか? もしくは、暗い?

主人公(?)の「ぴりか」が気になってしかたがありません。早く続きが読みたいっ!

まだ1月なのに、自分の今年の「ベスト3」入り確定の衝撃作でした。解説は、ライトノベル押しの三村美衣さんだったけど、ラノベではなかったです。これまでの、普通の学園ものとも違うし…。ジャンル分けは難しいけど、かなり新鮮だったのはまちがいありません。超オススメ。

マイナークラブハウスへようこそ!―minor club house〈1〉 (ピュアフル文庫)
木地 雅映子

ワコール



# by aqushibuya | 2010-10-17 16:17 | 注目

それにしても装丁がダサい

たとえその手を放しても
タイトルやカバーから、甘めな展開なのかなと初めは予想していたのですが
予想を良い方向に覆す、読後感のとても良い一冊でした。

最初は、犬猿の仲とも、無関心というわけではないが、
お互いの良さを認めない兄妹だった。
だが、いくつかの不幸や、時間の経過が、ふたりを変えてゆく。
ふたりの間にある、愛情でも同情でもない感情が、主張しすぎることなく描かれています。

父親の失踪、母親の喪失、漫画の仕事、編集者の裏切り等の、
「サブ」となる部分の書き方が非常に秀逸です。
全体的な展開は淡々としてるのに、私が一気読みしてしまった理由はそこにもあると思います。
視覚障害者について入念に下調べされてるなと文章の節々から感じられる点も好感が持てます。
ラストに疑問を持つ方もいるみたいですが、これからこのふたりはどう変わってゆくのか、
そのような想像の余地を残す終わり方で、私はありだと思います。


派手さはほぼ皆無の、登場人物の微妙な関係性を味わう物語。
テレビや漫画からは得られない類の、活字特有の良さが感じられます。
大満足でした。

明日この手を放しても
物語全体を通して、フィクション作品のようなドラマチックな起承転結は
ないかわりに、ノンフィクション作品のような心を苛む出来事が
ちりばめられています。そのような中で、兄妹の関係はもとより、
凛子と真司の成長が垣間見える、良い作品となっていると思います。
結末が物足りない、と感じる方もいらっしゃるかと思いますが、私はこのような
作品も好きです。
特に最終章での2人の関係には、心が揺さぶられる気がします。

正確に「問題あり」の兄妹の物語
途中失明した19歳の妹と自分勝手な兄。
決して仲の良い兄妹ではなかったけど、
父の失踪によりたった二人だけの家族となってしまい、
歩み寄りながら成長していく物語です。
各章ごとに語り手が兄と妹交互に代わり、1995年?2006年の2人が描かれます。

失明とか失踪とか重たいものを含んでいるけど、
全体像は明るくハートウォーミング。読みやすいです。

はじめは仲良くも悪くもないような曖昧な関係だったけど、
悲しみを共有し、助け合うことにより強い絆がうまれる。
特に年間を経た兄の変化がとっても頼もしい。
桂望実さんの作品は明朗でわかりやすいというイメージがあるけど、
今作は父の失踪に対する答えがないことでちょっと中途半端に思えます。
でもそのナゾがテーマじゃないから、その点は大目に見てあげてもいいのでは・・・。

それにしても装丁がダサい(-_-;)
現代のデザインじゃないでしょ、これ・・・。

明日この手を放しても (新潮文庫)
桂 望実

ブルガリ 時計



# by aqushibuya | 2010-10-17 00:11 | 生活

小説と演劇のはざま

舞台の小説化と知らずに読んだのだが、極端にデフォルメされたキャラと繰り返されるギャグはいかにも舞台のものだ。学園紛争のさなかに気を失い30年間眠り続けて目が覚めて、高校に再入学したオジサン高校生の引き起こす騒動を、同級生がリアルタイムに記録したという設定の話を、さらに10年後に発掘してそれを読むという、二重の回想構造になっている。その距離感は、きっと作者が現代の高校生に感じている距離感の反映なのか、あるいは小説と演劇という媒体の違いなのか。
演劇自体が、ノリで盛り上がるという非日常空間だから、現代の高校生がラップの音楽のノリで学生運動的な「自主開催文化祭」に突き進むという話で100%OKなのだろうが、小説の中だと、やっぱり立ち止まって自分の頭できちんと考えなきゃというようなものになるのかもしれない。そういう一種のためらい的なところに共感した。


劇場への招待状
演劇を見慣れていない人には、小説と思って読み始めるとなんのこっちゃになるでしょう。素直にシナリオで起こせばよかったのでは。でもそれだと売りにくいだろね。ははは。あれだけ筆の達者な鴻上さんでもこうなるのね、と半ば嬉しくもあり。これは編集の問題だけど、1行何文字入るか早い段階で決めなかったのかしらー。残念な改行位置がいっぱい。それだけで断然印象が違うのにもったいない。しかしお芝居として観たら面白いだろうという想像はできましたので、再演の機会があればぜひ観たいです。

懐かしい鴻上さん。
コメンテーターとしての鴻上さんが好きなので、店頭で名前をみて初めて買ってみました。
小説は苦手てでちょっと読んでほっぽり出してましたが、なんとか読みきったところ、感想は以外と良かったです。
学生運動ネタってのは大嫌いなジャンルなのですが、読み終えてタイトルに納得です。
過去のものにしたかったのですね、著者は。
僕もそう思います。ヘルメットに機動隊なんて話題は過去のものです。
今の若者は…もっと大きな野望を抱いていると思いますよ。
その証に、小説に登場する高校生たちは熱い気持ちを持っているじゃないですか。
その手段が見つからないだけ。
別に、学生運動が一番正しい思想と手段というわけではない。
それよりも、むしろ現代の若者たちの方が、よっぽど合理的で洗練された考え方を持っていると思う。
その分、大人たちも理屈で攻めてくるから、それに対する情熱と組織力が必要だよな?
頑張れ、現代の高校大学生たち!
大人はやっぱり強敵だぞ!

僕たちの好きだった革命
鴻上 尚史

ゲラルディーニ



# by aqushibuya | 2010-10-16 19:54 | 生活

女性は大変だ。

女であるからこそわかる複雑な気持ち。
角田光代さんといえば、多くの本を出してる超売れっ子作家。
でも、私はどうもテイストが合わず、どこがいいのかわからない作家さんでした。

ところが、この本を読んで、技術の高さに圧倒されました。
さすがだと。

この本はハナとチサトという仲良し2人組がお店を共同経営したり、2人の恋人との関係が描かれています。
私は、どちらかというと主人公のハナちゃんに感情移入してしまいました。

どうにもできない感情。
ないものねだりの気持ち。
嫉妬、焼もち。

あるはずのものが遠くに行ったときももどかしさ。

女にしか分からないぐちゃぐじゃした複雑な感情、機微をうまーく書いてある本だと思います。
読みすすめて「わかるわぁ?」と何度も口をついてでるような・・・。

本当のしあわせって何なんだろうな?とか。
そういうことを考えさせられる本でした。

お店を持って親友がいても悩みはあるもんだなと。
わかるわ?と思いながらも羨ましいなと思っている私もなかなか複雑なものです。

ぴったりくる人間ってなかなか難しいものですよね。
こういう人間の機微って本ならではだと思います。
ベテラン作家の力量に唸りました。

女性は大変だ。
主人公は37歳の女性。独身。小さな古着屋を共同経営している。
居酒屋で飲むシーンから始まるこの物語。のっけから主人公の心と
体がちぐはぐだ。日常の澱は彼女を真綿で包み、なお一層彼女を息
苦しくさせていく..


「かかとを磨く」というシーンに、うなる。
かかとというのは磨くものなのか、男の私としては初めての発見。
女性は大変だ。体のケアも、心のケアも。

透明感
角田光代の作品は、いくつか読んでいるが、今作も読みやすさは同様である。
二十代の作家には書けない表現力、世界観、リアリティーが卓越しているうえ、嫌な重さもない。
ただ、主人公のハナがあまり魅力的でなく、感情移入しにくい面が引っ掛かった。
現代女性の空虚感を重くならずに描く手法は、角田光代ならではで見事だ。

薄闇シルエット (角川文庫)
角田 光代

カルティエ 時計



# by aqushibuya | 2010-10-15 20:46 | 日記

レトロな表紙もすばらしい

読み終えたあと、少しだけ谷崎作品と同じ感覚をおぼえました。
ドラマはみたことないのですが、話題作ということで読んでみました。
この菊池さんは、当時は世俗的な小説作家という位置づけだったようですが、読者を引き込むすばらしいストーリーを書かれる作家さんだと思います。
この時代背景で(おそらく大正後期から昭和初期あたり??)今の東京と照らし合わせて、当時の情景がなぜか浮かんでくるような美しい描写。
キャラクターの描写もすばらしく、どんどん読めてしまいます。
ラストに感激。
このレトロな表紙もすばらしい。

今の世の中でもぜんぜん違和感ありません。
大正時代の当時の文化を楽しみつつ、
借金の問題とか、今の世の中でも起こっている
問題を鋭くついた作品ですね。
瑠璃子の父の唐沢男爵が不憫で涙が出ました。
本当に名作です。

高貴なる真珠
 私が菊地寛、『真珠夫人』を知ったのがドラマで放映されていた頃からです。ドラマは戦後に置き換えられていたが原作のほうは大正に書かれていた当時の雰囲気が醸し出されています。陰謀と策略によって恋人を引き裂かれた華族令嬢が男性社会に対し華麗で妖艶なる復讐を描く波乱万丈の物語に御座います。主人公は恋人に為に純愛を貫き通すということは大変なことであることがわかりました。大正という時代は竹久夢二、高畠華宵、蕗谷虹児という人間を輩出して多くの大衆の心を掴んだのでしょう。『真珠夫人』は最高の名作と語り継がれるでしょう。大正の世界を是非皆様にお勧めします。

真珠夫人 (文春文庫)
菊池 寛

ミネトンカ



# by aqushibuya | 2010-10-15 17:41 | 話題

餓鬼も阿修羅も天道もそのままで正しい

心地良い。
精神を病みながら日々のお勤めをする僧侶という主人公の設定が魅力的。玄侑宗久氏の本は、どれも心静かに淡々と読めるのが心地よい。その静けさの中から、何かヒントをいただいている気がする。

坊さんだって病んでいる。そんなときこそRockだせ!
観念的内的世界の吐露と、心象風景の具体性に読んでるほうが神経衰弱を引き起こしそうになった。
この不安定感は、無理やりサルトルを理解しようとして消化不良を起こした若い頃を髣髴させる。

しかし、読み進めていくうちに、破綻した結婚生活を義務感だけで履行してる知人男性とダブり、興味津々。
禅問答とロック&ドラッグの融合とでも言うんでしょうか。仏教では六道のいっとうピンが有頂天でキリが金輪際だと知った。そして、その間を行ったり来たりするのだと。。。
ココロの病を持つ人間の純然たるが故の危うさに惹かれました。ただ、こういう男とつきあうのは命がけになるんだろうな。

人はそのままで正しい。
神であり悪魔の役割も果たす表裏一体の神アブラクサス。
私たちは日々六道(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天道)
の中を生まれ変わり死に変わりしているわけで、

満足できずに餓鬼の苦しみを味わう日もあれば、
怒りに吾を忘れ阿修羅に狂う日もある。
子犬が産まれれば天使の笑顔にだって成れる。
私達はそう云う六道の幅を行ったり来たりして生活するわけだが、

そういうものを含めて肯定しようするのはさすが玄侑氏。
アブラクサスを祭り、敬おうとする氏の心意気は素晴らしい。

・・・おまえはそのままで正しい・・・

と、アブラクサスが浄念に働き掛けるシーンを観ると、
良かったんだと安心します私は。

餓鬼も阿修羅も天道もそのままで正しい。

と言いつつも、地獄や阿修羅など特定の道に固執し、
それが永続するようなことが在ってはならないし、
そうならないように努力するべきであるが。

アブラクサスの祭 (新潮文庫)
玄侑 宗久

ボレロ



# by aqushibuya | 2010-10-15 14:07 | 日記

人格とは脆いものなのか


多重人格者をテーマにした作品。普段は大人しく几帳面な人妻の実佐子に友美という自由奔放な別人格が存在し、医師の杉本が催眠術を使用しながら治療を試みる過程が描かれる。

本書の面白さは、多重人格者となった実佐子の過去に遡ることにより、別人格が発生した時期やその原因が徐々に明らかになっていく過程だ。この症状を医学的には解離性同一性障害と呼ぶとのことだが、人格の解離が発生する原因が幼少時の体験に基づくことがわかる過程は推理小説のように興味深い。

また、別人格が表面に出た時の実佐子の変容振りは恐ろしい一方で、同じ人間の器でも人格を変えるだけで全く違う人生を歩むことができるのだろうかと、妖しい魅力を感じた。

治療が進むうちに第3の人格が表れ、この結末は一体どうなるのだろうかと心配になったが、想定外ではあるが納得感のある結末となり最後まで楽しむことができた。

本書のメインは実佐子の治療であるが、その過程で医師の杉本や夫の知彦にも、表面的な人格の陰に本人も意識していない別人格が隠れていることが描かれており、人の人格は実は脆いものなのかと少し怖くなる作品であった。



解説的小説
「解離性同一性障害」をテーマに書かれていて、
それについては興味深く読めました。

精神医学、仏教や他の宗教、詩、哲学・・・と
様々な知識を横断しながら展開される解釈は
なかなか読み応えがあります。

ただ、ドラマそのものは地味です。
小説という形をとった「解離性同一性障害 解説」
といえなくもないな、と思いました。

最初は上手い女優さんが
「解離性同一性障害」を演じたら面白いだろうな、
とも思ったんですが、上記の理由で映画化とかは難しそう。
まあ、そんな気はさらさら無いんでしょうが。

今まで読んだ事がないタイプ
話は、多重人格者というか、解離性同一性障害という病気?にかかった新妻とその夫、治療を依頼された精神科医のチームで進んでいく。
新妻の中に3人の人格者がかわるがわる現れてきて、それぞれ違った人格なわけだから、肉体は同じでも表情や会話の内容や行動が全然違うという状況が、本当は幼児のころから続いていたのだが、それを誰も気づかず(本人も)、結婚して妊娠し自らの行動で流産までしてしまう。

おかしいと思った旦那が精神科医に相談し、催眠療法で解離性同一性障害という事に気づき、何とか一つにまとめようとするのだが…。

この話自体はSFだが、実際にこのような解離性同一性障害という病を抱えた人がいて、増える傾向にあるのだという。

そう考えると、普通の私と酔っ払った時の私はもしかすると自分でも気付かないうちに解離性同一性障害が発病しているのではないのだろうか?
そうでも考えないと、まさかあんなことやあんな事はしないだろう…。

この本の面白いところは、例の「阿修羅」との関連。向こうも三人の人格が現れていて、それの解釈などはそれぞれ語られてはいるが、正しいところはわかるまい。この本に書いてある事が本当なのかもしれない。

とにかく、章とかがないし、どこで休んでいいかもわからない感じで話が流れていくので、一度読んだら終わるまで読まないといけない本です。

阿修羅 (100周年書き下ろし)
玄侑宗久

ニットカーディガン



# by aqushibuya | 2010-10-15 00:53 | 生活

さまざまな女性たちの心情を切り取った作品

曲がりかどでも、分かれみちでもなく
“まっすぐに歩いてきたはずだったのに、振り返って確認すると、直線だと思っていた道は、ゆるやかなカーブだった”(著者あとがきより)

そうたとえられている、さまざまな女性たちの心情を切り取った作品。

たった2-3ページにすぎないそれぞれの話が、まるで自分の体験のように響くのは、著者自身がいくつもの“ゆるいカーブ”を過ぎてきたからかもしれない。

処女短歌集「ハッピーアイスクリーム」で多くの祝福の中にデビューした旭川の高校生が、上京して大学に通い、文筆活動をつづけ、いくつかの(かどうかわからないが)仕事をし、恋をして、結婚をして……その中でいくつもの“ゆるいカーブ”を過ぎてきたことだろう。

天才短歌少女の道は、まっすぐだったのか。まっすぐだったはずが、曲がっていたこともあるだろう。その逆もまた然り。

しかし。

“たくさんのゆるいカーブを過ぎたあとに見える景色が、美しいものであるように”

読者にそう願う著者の目には、きっと美しい景色が見えているのだろう。この本を見てそれを実感してほしい。

各話のしめくくりの短歌(5/7/5/7/7)のリズムが、あるときは心地よく、あるときは切なくストーリーを心の中に広げていく。著者の短歌はかんたんに詠めそうで詠めないものであるが、微妙に定型をはずれていたりするのに口に出してみると意外にもすんなり読めたりと、初期の歌とまた違った印象があった。これも“ゆるいカーブ”を経ての変化かもしれない。

女性の気持ちを知りたいときに
30篇のショートストーリーとそれに関する短歌が載っています。
人生の「ゆるいカーブ」にさしかかった30人のショートストーリーの主人公。
それぞれ、恋愛や仕事や友情などに悩みながらも真剣に生きていく姿に好感が
持てます。

特に女性の心理が生々しいくらいリアルに描写されているので、女性の気持ちを
知りたい男性にもお薦めです。

よく晴れた日に☆
30篇ある中で私が心に残ったものは、最後の「よく晴れた日に」でした。
会社を休んだ主人公のために平日なのにも関わらず仲間が集まってくれて、みんなで海にドライブに行った、というお話です。
これを読むと、自分が落ち込んで寂しさを感じる時も、友達は絶対支えになってくれるなあって実感できます。友達って最高じゃん!みたいに。
この短歌がまたステキでした。
「忘れない景色がいくつもあるうちは
 うまく笑えるような気がする」
何か心が温かくなる、そんな気分にさせてくれました。
おすすめの一冊です。


ゆるいカーブ
加藤千恵



# by aqushibuya | 2010-10-13 00:32 | 日記

トンデモなさが沸き上がる

いわゆるひとつの「ウェルメイドプレイ」
 なるほど、「よく書けている」、「力作」である。しかし、それがどうよ? これを外国語、たとえば、英語やフランス語に翻訳し、世界に出せるか? 出したら、たんなる三文小説だろう。

 どの登場人物も、「物語」を語るための「道具」でしかなく、生きている感じがしなかった。共感もできなかった。本作をミステリーとしている「秘密」……それが、最初から、引っ張っていくのであるが、オワリの方を先に読んでしまうと(笑)、なんだ?……である。そういう「秘密」は「ありふれている」し、「紋切り型」である……と、あえて言っておこう。

 70年時代とその時代を生きた人々を題材にしたということであれば、藤原伊織の『テロリストのパラソル』の方が、文学としてリアリティがある。
 だが、これだけの長さ(1000枚ぐらい?)を「うまくまとめた」のは、プロのお仕事でしょう(だから星3つ)。よかったね?。ただ、それだけ。
 しかし、なにが「恋」なんかね??

★五つが最高評価であることが狂おしく思える
あらすじは省略するとして。矢野は片瀬夫妻に出会わなければ罪を犯すことはなく、平々凡々な女としての一生を終えたのだろう―――そうは思うものの、矢野がわずか儚い時間でも、生まれてきた意味に巡り合ったならばどんな悲劇が巻き起ころうが、出会いは宝なのだ。事件後の夫妻の関係、彼ら三人以外の社会の反応に好奇心を大きく擽られた。それを架空のものだと、何度も忘れそうになった。恋愛小説と呼ぶにはあまりにも性モラルのない奔放な世界に投げ出されるが、文字を追うだけで私の想像の中に彼らの過ごした夏が映画のように描きだされた。つまり小池真理子が上手いのである。同著「望みは何と訊かれたら」は浅間山荘事件後からスタートが切られるが、本作は同じタイミングで終焉を迎える。何にしろ、あの事件がひとつの時代を集約し、ピリオドを打ったことを改めて感じさせられた。★五つが最高評価であることが狂おしく思える。今まで読んだ、もしくはこれから出会う作品と並べたとしても本作は間違いなく高く秀でるだろう。読み始めてからは、まるで自身のレベル倍ほどモンスターに遭遇してしまったような、そんなトンデモなさが沸き上がる。

これほど人の感情を色濃く描く作品はない!
これほど人の感情を色濃く描く作品はない!
そう断言したい・・・
それほど、主人公の女性の内面をえぐりだします。
「心神喪失」とはこのことか!と妙に納得。

そして感動のラストシーン。
ぼくは涙が止まりませんでした。
万感胸にせまる思い、
こう書くと陳腐な感じがしますが。

大学助教授の夫婦のアブノーマルな関係を軸に
話は進んでいく、エンターテーメント性も一級!
オススメの一冊です。

恋 (新潮文庫)
小池 真理子



# by aqushibuya | 2010-10-09 15:27 | 読書

日経新聞で毎日連載楽しく読んでました

引き込まれるストーリー展開!
ジャンルは「歴史小説」になるのかもしれませんが、歴史的背景をまったく知らなくとも楽しめるストーリーです。また、歴史が苦手な方も全く問題なく読めます。

主人公を中心に男気のある行動や台詞が多々あり、読んでいて「爽快感」を感じさせられます。

息もつかせぬストーリー展開が、読み手をぐんぐんと引き込む素晴らしい作品であると思います。

北方氏の著作は初めてですが、下巻はもちろんのこと、他の作品も読みたくなりました。

個人的な話ですが、日経新聞の連載開始時数日で読み続けるのを止めてしまいました。20ページを過ぎたあたりからどんどんと面白くなってくるので、その前に止めてしまったのだと思います。今となってはそのことをすごく後悔している反面、一息に読みたくなる作品なので、結果書籍で読むことができて良かったのかもしれません。

また、司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」と同時代を背景とした作品でもあり、歴史好きな方にはさらにたまらない作品かもしれません。ぜひこの作品もドラマ化して欲しいです。

久しぶりに傑作に出会いました。
ありがとうございます!

とにかく泣ける
日経新聞で毎日連載楽しく読んでました。

上巻を今日読み終わりましたが、とにかく殴りこみの場面と追放される場面、そして台湾での再開の場面泣けました。

とにかく読んでみて下さい。わくわくして読めると思います!!!

格好いい話。一気に読めました。
北方氏が歴史小説へ活躍の場を移してからは、ステレオタイプ的な
話の作り方に違和感と言うか、空きを感じて少し遠ざかっていましたが
本書は日経新聞で(毎日は読んでませんでしたが)連載時から気になって
いたので読んでみました。

本書は主人公の夫妻(モデルは実在の北方氏の曾祖父母)が兎に角魅力的
です。正太は、やさしいだけの男では無く、売られた喧嘩は必ず買い、
卑劣な手で挑んできた相手に対しては、仮に向こうが屈服してきたとしても
徹底的に叩きのめす。なかなか現代でこれだけ思いの強い男はそうはいない
だろうな、と思います。

個人的には弟の忠助との、言葉を交わさなくても通じる兄弟愛に強く惹かれ、
涙が止まりませんでした。

お勧めです!

望郷の道〈上〉
北方 謙三

ポシェット



# by aqushibuya | 2010-10-08 19:18 | 読書

その朴とつな姿勢に頭が下がります

極北の地を舞台にした、心震える物語。
本作の舞台となるのは

表紙に描かれた穏やかで牧歌的な風景とは裏腹、
荒れ狂う海に面した極北の湊。

過酷で、行き場のない環境の中で生きる人々の
濃厚な感情をつぶさに描いた短編集です。


過去と現在が交錯する構成が続くのことは、やや食傷ですが
いたずらにプロットをいじるのではなく、

名もなき人々の人生を想い、彼らが抱いたであろう心情を丹念に描く
その朴とつな姿勢に頭が下がります。

どの作品も、まさに出色の出来ですが
中でも印象的だったのが


かつて飢餓の村から逃れる途中、
唯一生き残った兄と生き別れた商人を主人公にした『海羽山。

極限の状況下、せめて子には生きてもらおうとする親の心情が
あまりに痛切で、有無を言わさずに胸に迫ります。

自分は誰かに対して、これほど深い感情を持つことができるのか
読み終わった後も、しばらくそのことを考え続けました。

まるで宝石のような短編集
北前舟が着く北の湊町が舞台。
6つの短編が収録されている。 
どの話もとにかく良い。北重人さんの小説は全部読んできたが、これが
一番でしょう。

泣いたり、はらはらしたり、物語の中に入り込んで登場人物と一緒に小説の世界を堪能しました。


汐のなごり (徳間文庫)
北 重人



# by aqushibuya | 2010-10-08 14:02 | 日記

夏休みの部活のあとのみかん水

陸上部員はどう思うのか,この小説を…
 あとがきによれば,作者自身も「800」をやっていたようだ.ならば,この小説は,余計な思いを排して,時代をよみ,フィクションに徹したということなのだろう.作者の時代,(「陸部」ではなく)「陸上」は,もっと地味だったし,どこか「祈り」に近いものがあった.
 だよね?

 現実感の希薄さが残念に思えたが,それは私の「余計な思い」が強かったからかもしれない.性,アルコール,暴力などは「青春」に不可欠なものかもしれないが,本書のそれらには共感しにくかった.「青春」はいつから,かくもdryでlightなものになったのだろうか.
 それだけ?

 舞台の設定が,自分と心理的な距離が近く,期待が大きかっただけに,当世風の青春小説にはなじみにくかったが,これから青春の只中に入っていく若人には,(希望というよりは)「期待」を与える小説なのかもしれない.「陸部」以外のひとに,より支持される青春小説ではあるまいか.
 まあ,そんな感じ?

800m競争の面白さがいまいち伝わらないなあ
本作品は、陸上の800m競争に明け暮れる中沢と広瀬および女性陣(伊田、山口、広瀬の妹)とが織り成す青春ドラマのような感じである。スポーツ小説を読みたい人にとってはあまり物足りない感じがします。男女の青春ものが読みたいのであれば薦めます。私は前者なので、途中から読みたくなくなりました。あさのあつこ『バッテリー』や森絵都『DIVE』の方が十分に楽しめました。

最初のころは、全部中沢のことを言っているのかなと思っていたけど、しばらく読んでみるとおかしいなあと言うことで、広瀬と中沢の話が交互に入れ替わりながら展開されていくのだなということがわかった。もう少しわかりやすく誰の話かと言うことが明確になっていたほうがいい。

もう少し陸上の800m競争の面白さというものがわかればよかったかなと思う。陸上の格闘技と言われるみたいだが、大会でのそういう駆け引きと大会に臨む過程の家庭と言うものがもっと見たかった。そこら辺が結構ないがしろにされたような気がした。


中高生のセックス事情はここまで軽くないと思うがなぜかスッキリ
この作品が書かれた90年代初め、僕も高校生だったけど、性に関してこんなに奔放な奴はなかなかいなかった。もうちょっとヤボな方が現実的かもしれないが、どっかのパラレルワールドのチュウコウセイの物語と思って読めば問題無い(ていうか読み進めていくうちに自分のいる世界では無い800ワールドにトリップしていた)

読み終わった後の爽快感は、夏休みの部活のあとのみかん水のようだ。

800 (角川文庫)
川島 誠



# by aqushibuya | 2010-10-08 13:28 | 生活

ユーモアで包んでしまう強さが本当に素晴らしい

死んでしまった友を救いたい
金城一紀は、やっぱりいい。
なんと言っても1番目の「太陽がいっぱい」が泣ける。金城の幼なじみも不幸な死をとげたのではないかと思う。
「いまから龍一を救いにいかなくてはならないからだ。・・・物語の中では、死者は当然のように蘇り、まるで死んだことさえなかったように動きまわれることはおろか、空を羽ばたくことさえできるのだ・・・さあ、救いに行こう。」堂々の★4つ獲得!

心が温かくなる1冊
本当に金城一紀の最高傑作ではないかと
5つの物語は全て「ローマの休日」で結ばれているが、まったく異なった物語で金城一紀の様々な面が垣間見えるであろう。
好き嫌いはあるだろうが、やはり「愛の泉」が一番だ。これこそ彼の伝えたいことではないのだろうか?
俺だって「死んだあとに、愛する人にクスクスと思い出し笑いをして欲しい」なんて思わされてしまう。

「GO」から引用すれば、彼の作品には 一切の『主義』は関わってこない。
「映画篇」だけでなく、彼の全ての作品に共通することは、自分ではなく誰かのために何か出来るか?ということではないだろうか。
人が抱える痛みや悲しみをユーモアで包んでしまう強さが本当に素晴らしい。

また、この「映画篇」は含まれる5つの短編だけでなく、「対話篇」、「SPEED」とも結ばれており、これらの作品を読まれてない方は、読み終えた後に手に取っていただきたい。
特に「対話篇」の「花」には新たな観点を与え、彼の作品にしてはあまり好きでなかった「対話篇」がとても好きなった。

彼の新しい作品が待ち遠しい。

映画が好きな方
作者はすごく映画が好きな方なんだと思いました。映画が好きな方だとなおいっそう楽しめる本だと思います。短編集なのですが、全ての作品が「ローマの休日」に繋がっています。読み方を変え、最後の短編集から読んでみるのもおもしろいと思います。
読んでみて、「ローマの休日」をまともに見たことが無かったので、今度見てみたいという気持ちになりました。

映画篇
金城 一紀



# by aqushibuya | 2010-10-07 19:41 | 話題

リアルさが足りない

そうくるか
 えっ あっ ちょっ

 まさかこういう展開になるとは以外

 北村作品は面白いけど、合わない人は合わないかと

期待する程の内容でもない。
一言で言えば、「リアルさが足りない。」
もちろん、17歳から42歳に時が飛んでしまう、という設定にではない。
問題は42歳になってからである。

中身が17歳の少女が42歳の高校教師の仕事をするのは並大抵の事ではないであろう。
「夫」という指導役や「娘」という相談役がいたとしても、である。
苦悩、葛藤や挫折を嫌という程経験して当然のはず。

しかし、「42歳の私」は、それ程の問題を抱える事もなく日常を続けていく。
そして高校教師のありきたりの日常の描写が延々と続き、この中弛みが読者を飽きさせる。
ここにリアルさが感じられないのだ。

例えば、「風と共に去りぬ」を読んでみるといい。
読んでいる途中に疑問が湧き上がるどころか、物語に引き込まれていくはずである。
名作を読み慣れた方には、この物語展開のミスと深さの足りなさに失望するであろう。

衝撃的
 十七歳の女子高生がある日うたた寝から目覚めたら四十二歳のおばさんになっていた。その設定もさることながら、その事態から一歩踏み出そうとする彼女の行動力、決意にまず驚かされました。自分だったらどうするか? たとえ夫が同じ職業、娘が同じ高校に通う、という恵まれた環境であったとしても、よくできるな、というのが読みながらの感想でした。
 しかし読み進めるうちにどんどん引き込まれていきました。細かい描写が生きています。現実感が溢れています。だからこそ真理子の感じる不条理が際立ちます。素直に真理子を応援したくなります。彼女は強い。そして人を引きつけます。しかしすべての人が彼女のように強いわけではない。強くありたいとは願うけれど。そういったことを考えされられました。

スキップ (新潮文庫)
北村 薫



# by aqushibuya | 2010-10-07 19:39 | 生活
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by aqushibuya

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